認知症と介護

2019.05.01

令和になりましたね。

新しい時代でも、みなさまと健康におつき合いできればと思います。

  

さて前回のコラムで、認知症は

「子どもが発達していくのと同じように、

発達を逆行するような退行のプロセスをみている」

とも考えられるとお話しました。

  

医療や介護の現場だけでなく、日常の風景でも

認知症のあるご高齢の方に対して、つい幼児言葉をなげかける光景をよく見かけます。

  

「おばあちゃん、ご飯こぼしちゃったんだ」

「おじいちゃーん、おトイレすませてきちゃってね」

  

よく耳にするやりとりです。

意識していなくとも、知らないうちに子どもと同じ面影をご高齢の方に感じているのかもしれませんね。

これは、よく解釈すれば愛らしい存在として認識しているのでしょう。

  

ただし、

発達している途中の子どもと、

退行の過程にある認知症の方には大きな違いがあります。

その方が経てきた経験・歴史でしょう。

ご高齢の方々はいわば人生の大先輩です。

私たち介護者の世代を育てながら、日本の高度成長を支えてきた方ばかりです。

  

  

  

  

ですので、ご高齢の患者さんには

“尊敬・感謝”の気持ちを常に抱きながら医療・介護にあたりたいなと私自身は思っています。

とはいえ、時によって介護の現場は壮絶です。

闘いといっても過言ではないことも多くあります。

家族を含めた介護者が

常に尊敬の念をもって介護にあたれるような認知症のコントロールをめざして、

日々の診療をつづけていきたいと考えています。

認知症

2019.04.29

ものを記憶したり、状況にあわせて適切に行動したりする能力を

「認知機能」と表現します。

認知機能が低下してくる状態が認知症です。

  

 ここで、ヒトの一生をちょっと振り返ってみましょう。

乳幼児が小・中学校を経て高校・大学生や社会人になります。

社会性などを学び環境に適応できるようになっていく過程を

「発達」

といいます。

社会性や学力の向上とともに、運動能力・心肺機能も

成人するにつれて向上していきます。

     

   

    

     

  その一方で年を重ねると、

ピークを過ぎるようにこれらの能力は徐々に低下していきます。

いわば「退行」していくわけです。

心肺機能・筋力が低下してくるのと同じように、

脳の機能も加齢とともに必ず低下していきます。

ですから認知機能の低下も、どんな方であれ、皆さん早かれ遅かれ必ず経験することになります。

百歳を過ぎた自分を想像してみるとよくわかると思います。

残念ながら癌や心筋梗塞・脳卒中をわずらい、

この「退行」が起こる前にいのちを落とされる方が少なからずいます。

これらの方は、見かけ上は認知症にならないで最期を迎えているのです。

別の言いかたをすれば、幾多の病気・ケガを乗り越えた方が

認知症の段階までたどり着いたと考えることができます。

    

  

  

  

認知症を “病気” ととらえることもできますが、

発達と反対の「自然に起こる退行の過程をみているんだ」と考えると、

認知症の受け入れ方も多少かわってくるのではないでしょうか。

もの忘れ5

2019.04.27

患者さんがもの忘れが気になって医療機関を受診した際には、

まずその方の生活状況(病歴といいます)を聴きとります。

診察所見、記憶テスト、血液検査、脳MRI検査などを参考に、診断を行います。

やはりアルツハイマー型認知症の頻度が多いのですが、

なかには多発性脳梗塞やレビー小体型認知症という認知症も少なくはありません。

前頭側頭型認知症や 嗜銀(しぎん)顆粒性認知症などというのもあります。

まれではありますが、

大脳皮質基底核症候群や進行性核上性麻痺といわれるような神経疾患もあります 。

(ただし、これらは認知症の前に歩行困難などで先に外来を受診することが多いです)。

もの忘れに困って外来受診しましたが、実は脳腫瘍だったとか、

ウィルス性脳炎(ヘルペス脳炎など)、クロイツフェルト・ヤコブ病、進行性多巣性白質脳症

だったとか。

前にも書きましたが、

何らかの(ほかの病気のための)薬が原因でもの忘れをきたしたり、

また栄養不足でビタミンBが不足していたりしても「もの忘れ」を起こします。

  

  

  

  

聞きなれない病名がたくさん出てきましたよね。

何をお伝えしたいのかというと、

ひとくちに「もの忘れ」と言っても、実はアルツハイマー型認知症だけでなく、

ほかにもたくさんの病気があるのです。

ですので、「おかしいな?」と感じたら皆さんのかかりつけの医師に相談し、

できれば認知症の診療経験の多い医師・医療機関を紹介してもらうと良いと思います。

03-3883-6180
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