もの忘れ4

2019.04.22

睡眠リズムの乱れが問題となって“もの忘れ状態”を引き起こすことがあります。

このような方もいらっしゃいました。

元来健康であったBさん81歳男性は、奥様や長男家族と同居しています。

自分の身の回りのことは何でも自分で行っていました。

ある日、兄弟に急なご不幸があり、地元の北海道に大あわてで帰りました。

短期間のスケジュールでご兄弟とのお別れをすませ、

疲労を残して自宅に帰ったBさんは、疲れたせいか昼も夜も寝てばかりになりました。

そのうちなんと、同居する孫の名前も出てこないなど様子がおかしくなりました。

びっくりしたご家族は「急に認知症?」と、Bさんを連れて外来を受診されたのです。

診察のときの受け答えは一見しっかりしているようですが、覚えているはずの家族の名前などは出てきません。

兄弟の葬儀に出たことも記憶にないようです。

帰省に同行した家族によくお話をきくと、

北海道でも非常にあわただしく、夜もあまり眠れずトイレに何回も起きていたようです…

   

  

    

実はご高齢の方は睡眠のリズムがみだれると、

「せん妄(せんもう)」

という状態になることがよくあります。

急に認知症にかかったかのようになります。

Bさんの場合も「せん妄」と診断し、

日中はご家族に外に連れ出してもらい日光を浴びていただき、

夜はきちんと電気を消して、決まった時刻に就寝していただくことをお願いしました。

10日もすると睡眠リズムも戻り、以前と同じように生活リズムを戻すことができ、

記憶も問題なくなったのです。

このせん妄は、急に入院したりなどの環境の変化でも多くみられることです。

まわりのご家族は、本当にびっくりしてしまいますよね。

わたくしたち医療従事者の間では、多く経験することなんです。

もの忘れ3

2019.04.20

実は 認知症はそれほどたいしたものではないのに、

もの忘れ症状を助長するようなことが時々あります。

先日こんな方が相談にみえました。

73歳男性のAさんは、奥様とお嫁さんに連れられて外来を受診されました。

奥様の話では、最近Aさんは日中にボーっとする時間が多く、

声をかけても返事がないこともあるとのことです。

また、日中の 居眠りも増えたようです。

以前は趣味の将棋の本をよく読んでいらしたようですが、

最近は本を読む様子がまったくありません。

こういった様子が、 1か月前くらいから目立つようになってきたとのことです。

前回お話した長谷川式簡易知能評価スケールを行うと25点でした。

まあまあの点数ですよね。

よくよく話を聞くと、3か月前から腰痛のため整形外科にも通い始めたようです。

かかりつけのドクターが親身に対応してくれて、いろいろと薬を考えてくれたようです。

      

   

  

よくみてみると、 その痛み止めのなかには、眠くなる成分が入っている薬がありました。

実は最近よく痛みに対して使用されるようになった薬のなかには、

眠気をだす薬があります。

Aさんの場合は、この痛み止めが悪さをして日中の集中力を低下させていたのです。

あたかも認知症のようにみえてしまったわけなんですね。

状況をお話ししてこの薬をやめると、Aさんの症状はすっかり良くなり、

以前のように趣味の活動にも積極的に取り組むようになりました。

日常生活の中には記憶や集中力に影響をおよぼすことが多く隠れているので、

ちょっと注意が必要ですよね。

もの忘れ2

2019.04.19

「もの忘れが気になる。認知症のはじまりかしら?」

と患者さんが外来を訪れた時には、

まずいろいろな生活のエピソードを聴取します。

その“もの忘れのエピソード”が

一般的にも起こりうるものか

それとも病的なものなのか

という観点で話をきいていきます。

   

外来で行う評価のひとつとして、10分程度でできる簡単なテストのようなものがあります。

「長谷川式簡易知能評価スケール」 や

「MMSE」と呼ばれるものです。

テスト内容に今日の日付、ちょっとした計算、そして簡単な記憶問題などが含まれます。

すべて正解すると30点満点のテストで、

「おおよそ20点が正常と認知症の境目ですよ」

と便宜的には説明しています。

でも実際には、そう簡単に線引きできる話でもありません。

たとえば100歳に近い方の23点と、

社会でバリバリに働く人の23点、現役教師の23点

を比べるとどうでしょうか。

   

    

90歳を過ぎる方ならば23点もとれればすごく良いのではないかと思います。

一方、現役で仕事をされている方が23点ではおそらく仕事に支障があるでしょう。

このように同じ23点でも背景によって判断が変わってきますよね。

   

これらのテストはあくまでも目安です。

生活背景やエピソードとあわせて総合的に判断していくのです。

実はこのテストは、認知症でなくとも集中力が持続しないと点数が低下します。

次回はこのことについてお話をしましょう。

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