認知症

2019.04.29

ものを記憶したり、状況にあわせて適切に行動したりする能力を

「認知機能」と表現します。

認知機能が低下してくる状態が認知症です。

  

 ここで、ヒトの一生をちょっと振り返ってみましょう。

乳幼児が小・中学校を経て高校・大学生や社会人になります。

社会性などを学び環境に適応できるようになっていく過程を

「発達」

といいます。

社会性や学力の向上とともに、運動能力・心肺機能も

成人するにつれて向上していきます。

     

   

    

     

  その一方で年を重ねると、

ピークを過ぎるようにこれらの能力は徐々に低下していきます。

いわば「退行」していくわけです。

心肺機能・筋力が低下してくるのと同じように、

脳の機能も加齢とともに必ず低下していきます。

ですから認知機能の低下も、どんな方であれ、皆さん早かれ遅かれ必ず経験することになります。

百歳を過ぎた自分を想像してみるとよくわかると思います。

残念ながら癌や心筋梗塞・脳卒中をわずらい、

この「退行」が起こる前にいのちを落とされる方が少なからずいます。

これらの方は、見かけ上は認知症にならないで最期を迎えているのです。

別の言いかたをすれば、幾多の病気・ケガを乗り越えた方が

認知症の段階までたどり着いたと考えることができます。

    

  

  

  

認知症を “病気” ととらえることもできますが、

発達と反対の「自然に起こる退行の過程をみているんだ」と考えると、

認知症の受け入れ方も多少かわってくるのではないでしょうか。

もの忘れ5

2019.04.27

患者さんがもの忘れが気になって医療機関を受診した際には、

まずその方の生活状況(病歴といいます)を聴きとります。

診察所見、記憶テスト、血液検査、脳MRI検査などを参考に、診断を行います。

やはりアルツハイマー型認知症の頻度が多いのですが、

なかには多発性脳梗塞やレビー小体型認知症という認知症も少なくはありません。

前頭側頭型認知症や 嗜銀(しぎん)顆粒性認知症などというのもあります。

まれではありますが、

大脳皮質基底核症候群や進行性核上性麻痺といわれるような神経疾患もあります 。

(ただし、これらは認知症の前に歩行困難などで先に外来を受診することが多いです)。

もの忘れに困って外来受診しましたが、実は脳腫瘍だったとか、

ウィルス性脳炎(ヘルペス脳炎など)、クロイツフェルト・ヤコブ病、進行性多巣性白質脳症

だったとか。

前にも書きましたが、

何らかの(ほかの病気のための)薬が原因でもの忘れをきたしたり、

また栄養不足でビタミンBが不足していたりしても「もの忘れ」を起こします。

  

  

  

  

聞きなれない病名がたくさん出てきましたよね。

何をお伝えしたいのかというと、

ひとくちに「もの忘れ」と言っても、実はアルツハイマー型認知症だけでなく、

ほかにもたくさんの病気があるのです。

ですので、「おかしいな?」と感じたら皆さんのかかりつけの医師に相談し、

できれば認知症の診療経験の多い医師・医療機関を紹介してもらうと良いと思います。

もの忘れ4

2019.04.22

睡眠リズムの乱れが問題となって“もの忘れ状態”を引き起こすことがあります。

このような方もいらっしゃいました。

元来健康であったBさん81歳男性は、奥様や長男家族と同居しています。

自分の身の回りのことは何でも自分で行っていました。

ある日、兄弟に急なご不幸があり、地元の北海道に大あわてで帰りました。

短期間のスケジュールでご兄弟とのお別れをすませ、

疲労を残して自宅に帰ったBさんは、疲れたせいか昼も夜も寝てばかりになりました。

そのうちなんと、同居する孫の名前も出てこないなど様子がおかしくなりました。

びっくりしたご家族は「急に認知症?」と、Bさんを連れて外来を受診されたのです。

診察のときの受け答えは一見しっかりしているようですが、覚えているはずの家族の名前などは出てきません。

兄弟の葬儀に出たことも記憶にないようです。

帰省に同行した家族によくお話をきくと、

北海道でも非常にあわただしく、夜もあまり眠れずトイレに何回も起きていたようです…

   

  

    

実はご高齢の方は睡眠のリズムがみだれると、

「せん妄(せんもう)」

という状態になることがよくあります。

急に認知症にかかったかのようになります。

Bさんの場合も「せん妄」と診断し、

日中はご家族に外に連れ出してもらい日光を浴びていただき、

夜はきちんと電気を消して、決まった時刻に就寝していただくことをお願いしました。

10日もすると睡眠リズムも戻り、以前と同じように生活リズムを戻すことができ、

記憶も問題なくなったのです。

このせん妄は、急に入院したりなどの環境の変化でも多くみられることです。

まわりのご家族は、本当にびっくりしてしまいますよね。

わたくしたち医療従事者の間では、多く経験することなんです。

03-3883-6180
PAGE TOP